みずほたんと言うなかれ

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★ 「ちわーす!」 放課後、生徒会室を訪れるとふたりの先輩の姿があった。科学研究部とかけ持ちしている天才肌の二年生、家須満(いえすみつる)先輩と、猪俣の目的である清川瑞穂――みずほ先輩。 振り向くとつやめく髪が上品に舞い、深い黒を湛えた瞳が俺を捕まえる。 「あら、かつき君。今日は来る予定なかったんじゃない」 「いや、実はみずほ先輩にお願いがあってきたんです」 みずほ先輩の視線がちらりと俺の隣に向けられた。 「かつき君の友達?」 「まあ、そうっすね」 猪俣はいそいそとみずほ先輩に歩み寄り、目の前で片膝をついて顔をあげた。 「清川先輩、お初にお目にかかります。俺、黒澤の親友の猪俣猛司っていいます。以後お見知りおきを!」 猪俣はみずほ先輩にグイグイ攻め込む。しかもなぜ王子キャラを演じるのか意味不明だ。しかも親友であるはずがない。 「えっ、ええ、よろしく」 あまりの勢いに、さすがのみずほ先輩もドン引きしている。 猪俣猛司――それは猪突猛進の類語に違いないと、俺は思った。 センターテーブルを挟んでみずほ先輩と向かいあう。ラブレターを一読したみずほ先輩はゆっくりと息を吐いた。 「なるほど、なんらかの理由で手紙が濡れ、送り主がわからなくなったのね」 「だから相手を突き止めたいってことらしいっす」 「はい、よろしくお願いします! それはさておき、清川先輩って広報誌書いてるんですよね」 「あっ、うん。そうだけど……」 「『瑞穂のタウンアドベンチャー!』、あの地域密着コラム、いつも楽しんで読ませていただいています!」 「わあ、嬉しいわ。ありがとう」 笑顔を向けられた猪俣は後頭部を掻き顔を赤らめる。
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