32人が本棚に入れています
本棚に追加
思えば俺とみずほ先輩の接点はその広報誌にある。
生徒会員となるやいなや強引に取材を手伝わされ、今後も付き合ってほしいと言われた。断る理由を持たなかった俺は二回返事で承諾した。「いいっすよ、俺フリー(ひまの意)だし」、と。
以来、みずほ先輩に連れ回され下僕ライフを堪能している。
「いやー、俺、サッカー部なんすけど、今度大会があるんでぜひ、取材に来て欲しいなー、なんて思ってます」
「もしかしてー年生にしてスタメンなの?」
「はい、まさにそうです!」
「レギュラー争いって激戦なのよね。すごいわ猪俣君」
「いや、それほどでもなくはないですけど、ははは」
猪俣はラブレターのことなどそっちのけでみずほ先輩と盛り上がる。
なに脱線してんだこいつは! みずほ先輩に鼻の下伸ばしやがって!
いらっとして猪俣の太ももをつついたが、俺の手はあっさりとはねのけられた。
おい、俺はもう用済みってことなのか! 猪突猛進しすぎだぞお前!
ようやっと無駄話が終わった。
「猪俣君、このラブレター預かっていいかしら」
「どうぞどうぞ、好きにしていいです。それで、謎が解けたらまたうかがいますので、そのときは黒澤にでも声かけてください」
猪俣はそう言って立ち上がり、ヘコヘコと挨拶をしながら上機嫌で生徒会室を出ていった。
最初のコメントを投稿しよう!