みずほたんと言うなかれ

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見送った後、みずほ先輩は真剣な表情になる。 「かつき君、ちょっといいかしら」 「ういーっす」 俺はみずほ先輩と向き合って腰をすえる。便箋と封筒が目の前に差し出された。 「この相談、どこかおかしいと思わない?」 「やっぱ、そうっすよね」 すべてを見透かしたかのように澄んだ眼差しで語るみずほ先輩。 違和感はあったものの、具体的にわかっているわけではない俺。 「まず、封筒には濡れた跡がなかったわ」 「あっ、確かにそうですね」 ということは、便箋を封筒に入れる前に、送り主の名前は滲んでいたことになる。雨のせいではないのか。 まさか、涙の雫? いやいや、さすがに文字の滲みに気づかないはずはない。 みずほ先輩はさらに疑問点をあぶり出す。 「それに彼のふるまいがおかしいと思ったの。深刻な様子ではなかったし、せっかくもらったラブレターを無関係の人に渡すなんて考えられない」 たしかにみずほ先輩の言うとおり、猪俣はラブレターを貰うという奇跡をさほど意識していない気がする。 「そしてこの番号の書かれたキラキラマークの丸ふたつ。――これは想像がついたけど」
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