みずほたんと言うなかれ

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「もしかして猪俣って、みずほ先輩に気があるんじゃないですか?」 みずほ先輩はきょとんとしているが、俺は自分の仮説を説明する。 「猪俣はみずほ先輩に近づくための作戦を考えた。生徒会がお悩み相談をしていると知り、白石と結託して謎を込めたラブレターを書き上げてもらう。そして謎解きを口実にして、みずほ先輩を相談窓口として指名した」 そうだとすれば、もらったラブレターをみずほ先輩に渡したことも納得がいく。 「謎が解けたらラブレターを取りに来ると、猪俣は言っていました。このラブレターは接点を維持するにも有効だってことです」 そうならば、送り主の名前が滲んでいたのは涙の雫ではなく、謎かけの必要条件だったのだろう。 仮説を聞いたみずほ先輩はラブレターを再読し考えを巡らせている。 「なるほど、つじつまが合うわね。でも……」 突然、何かひらめいたようで顔を上げて俺を正視する。 「ねえ、猪俣君に『謎が解けた』って伝えてくれないかな。それと――」 みずほ先輩は振り向き、パソコンの画面と向き合う家須先輩の背中に声をかけた。 「家須君、ひとつお願いがあるんだけどいいかな」 家須先輩は振り向き、落ち着き払った声でいいよ、と返事をする。まるで用件を承知しているかのように。 「それからかつき君、きみは明日、猪俣君よりも先に白石さんを呼んでほしいの」 「白石を?」 「ええ。もっと確かめたいことがあるから」 俺は首を縦に振ったが、その意図はよくわからなかった。
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