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みずほたんと言うなかれ
「よう、黒澤克樹君! 頼みがあるんだ』
声の主は突っ立った短髪の男、猪俣猛司。サッカー部に所属する俺のクラスメイトだ。
「お前、たしか生徒会の一員だったよな」
「ああ、そうだけど何か用があんのか」
「生徒会ってさ、学生のお悩み相談にのってくれるんだよな」
「ああ、そういう役目もあった気がする。でも俺が相談に乗るわけじゃなくて、上級生が――」
「そうそう、だから橋渡しを頼みたいんだよ!」
猪俣は俺に身を寄せ、自分の制服の内ポケットに手を突っ込む。
「実はこれなんだけどな」
取り出したのはパステルイエローの封筒。生徒の目を盗んでこっそりと開く。中には四つ折りにした可愛らしい花柄の便箋が入っていた。
「朝、下駄箱に入ってたんだけどさ、このラブレター、お前ならどう思うよ」
「はぁ、ラブレター⁉」
意外にもこいつ、女子にモテるのか! どう思うって、羨ましくないはずがないだろ!
「まぁ、読んでみろよ」
抵抗はあったが、持ち主の相談なのだからやむを得ない。それではごめん失礼する、こいつを好きになった変わり者のきみよ。
開くと並んだかわいらしい丸文字が並んでいる。
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