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日も暮れだし、そろそろ家に帰らなければ、とは思う。
しかし気晴らしはしたはずなのに、どんどん気持ちは重くなっていった。
「……はぁーっ」
ため息をついて道ばたで、タピオカいちごミルクのストローを咥える。
父はまだ怒っているだろうか。
それにもしそうだとしても、私には謝る気も進路を変える気もない。
「かのじょー、さっきからそこに立ってるけど、暇なの?」
「……え?」
声をかけられて俯いていた顔を上げたら金に近い茶髪の、若い男が立っていた。
「暇ならオレと、お茶しない?」
耳にいくつもピアスをつけている男は、馴れ馴れしく私の肩に手をのせてくる。
「あの、えっと。
……けっこう、です」
曖昧に笑い、その手から逃れるように一歩身体をずらす。
けれど男はさらに距離を詰めてきた。
「そんなこと言わないでさー。
お茶くらいいいじゃん?」
「その、大丈夫、なので」
こんなとき、女子校育ちで男性慣れしていない自分が憎い。
それにいつものようにボディガード連れなら、こんな人から声すらかけられなかったのに。
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