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歌い終えるとリカは思わず拍手をする。
「へぇー。すごく上手ね。よかったわよ。」
両手で口元のマフラーをおろし、笑顔で伝えた。
「ありがとうございます。どうも・・・。素直にうれしいです。」
彼はギターピックを弦の間に挟みながら、少し恥ずかしそうに答える。
「ねぇ、いつもここで歌ってたの?わたしこの駅、毎日使ってるけど、あなたを見かけたの初めてだったから。」
「はい。一年位前まではここでよく歌っていました。ちょっと事情があって、しばらく辞めちゃってたんですけど。でも、もう一度やってみようかな、って。」
語るときの彼の声は、歌うときのそれよりも幼い感じだった。
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