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プロローグ
戦いの終わり。
物語で描かれるそれは多くの場合幾度かの困難の末に訪れる結末の一つであり、そしてその先に彼ら彼女達の目指した理想の世界にたどり着いた時の事を多くの場合言うのだろう。
でもそれはあくまでもハッピーエンドの物語の中だからこそ言える話だ。
でもその裏にはいつだって戦いに敗れて絶望する存在がいる。
中にはそんな主人公に視点を当てて描くストーリーだってある。
なら今俺達が戦った物とは何だったのか。
敵だと思ったを作ったのは他でもない俺達と同じ何気なく生きる人間だった。
正義だと信じていたのはあまりにも不確かで独りよがりな自己満足なんだと思い知らされた。
あの時親父が誠太郎を通じて俺に伝えたかった事はこれだったのだろうか。
たった一つ信じ抜ける物を見つける事。
親父は言った。
俺にとってそのたった一つとは何だったのか。そもそも、最初の頃の俺は信じない事こそが何よりの理想だった。
あの日雨が言った、あなたはこれから大切な人に出会い、そして失い、自殺すると言う予言を信じない事。
それを覆して、大切な物を守り抜き。
いつかあの日のように今度は皆で蜜柑でも食べていられたなら良いと、強く願っていた。
でもその理想は、今になって呆気なく砕け散ってしまった。
俺が出会った大切な人、茜の消滅によって。
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