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夜でも明るい街を歩いて、壱花たちは、ちょっと離れたスーパーで穴あきお玉を買った。
「ちょっと寄るとこあるんですけど、いいですか?」
と壱花が言うと、冨樫は、わかっていたように、ああ、と言う。
壱花はあのビル街のお稲荷さんを覗いた。
狭く暗い境内に、屋台のような小さな駄菓子屋。
提灯の灯りの中、そろばんを弾いていたオーナーのおばあさんは顔を上げないまま、壱花に訊く。
「店はどうした?」
「斑目さんと社長がやってます」
そうかい、と言うおばあさんに、
「今日はどうもありがとうございました。
助かりました」
と壱花が頭を下げると、冨樫も一緒に頭を下げた。
あの、と身を乗り出し、壱花は訊く。
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