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「なんかワクワクしてきましたねっ」
港を行き交う船の灯りも、これから乗り込もうとしている船の灯りも夜の海に映えて美しい。
壱花は船に乗り込みながら、浮かれた調子で倫太郎たちに、そう言った。
「お前はいつもなんでもワクワクしてるだろうが」
と素っ気なく倫太郎は言うが。
この人たぶん、船も好きなんじゃないかなと壱花は思っていた。
駄菓子とか景品のモデルガンとか好きな……
いや、本人は好きじゃないと言い張っているが。
そんな人は船も好き、と壱花は偏見により思っていた。
冨樫さんは実のお父さんに船のラジコン買ってもらったとか言ってたから、もちろん好きだろうし、
とクソ真面目な顔でスーツケースをガラガラやっている冨樫を見る。
「生温かい夜風が吹いて、ドキドキしますねっ」
「生温かい夜風とか、今にもなにか出そうだろ……」
と倫太郎に言われてしまったが。
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