しげじいさんのスマホ

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 しげじいさんと裕子さんが感動の再会を果たした深夜、周囲に人がいない所で俺をスマホに変えた魔法使いが現れた。 「スマホになって気分はどうだ。さぞ苦しかろう」 「いいや、スマートオンでリネは最高だ!」  魔法使いが顔を覆っているフードを脱ぐと、口を真一文字に結び、目が充血している怒りの血相が現れた。俺はその姿に震え恐怖を感じた。 「私は自由に動き回る人間を動くことができない姿に変えて、もがき苦しむ姿を愉悦としてきた。だけど、おまえはどうして嬉しそうにしているんだ!」 「しげじいさんがLINEから始まる人の繋がりの大切さを教えてくれたんだ」 「今なら特別に人間に戻してやってもいい」 「このままスマホのままがいい」  魔法使いはその言葉を聞いて、口角を上げて歯を食いしばると、深い悔しさを顔に滲ませながら消えていった。  俺はしげじいさんのスマホとして生涯を送ることを決めた。
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