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俺の頭の中に疑問符が舞う中、しげじいさんは俺を箱にしまうと、翌日になってまたも開封の儀式が行われた。しげじいさんは目を輝かせて嬉しそうな笑みを浮かべていた。
「今日はリネをしようかのう。わしがこれを買った目的を果たさなきゃならん」
「リネって何のことだろうか」
しげじいさんは隣の部屋から八冊の分厚いノートを持ってきた。
「リネをするには緑のが必要じゃったな。たしかストアというところにあると聞いたのう」
「リネって、もしかして……」
スマホを持ちながらノートの最初のページをしげじいさんが凝視して確認した。最初のページにはスマホのやり方や困った時に参考になることが書かれてあった。
「そうじゃった。リネは別名ラインじゃった」
「別名じゃないです。LINEと読むんですよ!」
しげじいさんがLINEアプリをダウンロードして、昨日と同じくスマホと奮闘してノートを見ながらID検索をして友達申請をした。
「この分厚いノートは何だろう。LINEのやり方が詳細に書かれてある。それとやりとりが事細かに書かれている」
「ばあさん、裕子に友達申請とやらを送った。あとは、あいつがわしを友達追加してくれたら使えるのう」
「裕子さんというのは誰なんだろう?」
しげじいさんがスマホを握りしめて、仏壇の前まで行って線香をあげると頭を下げて目を閉じた。仏前にはしげじいさんの妻と思しき人の遺影が飾ってあった。
「ばあさん、もうすぐ、喧嘩別れになった娘の裕子と会えるからのう。あいつにばあさんが亡くなったことを伝えねばならん。わしがリネでしっかり繋げるからのう」
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