しげじいさんのスマホ

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「……ごめんね。ごめんなさい。LINEのメッセージが届かなくなって、もしかしたらと思っていたけど、でも、そう思いたくなくて。私、現実から逃げてた」 「母さんは病気のことはわしにしか言わなかったからのう。気づかなくても仕方ない」 「母親が亡くなったかもしれないのに、何もできなくて、最低な娘ね」 「母親が亡くなったことをすぐに受け入れられる人なんていないもんだ。わしも意地を張っておまえとLINEできんかった、わしも最低の父親だ。最低な者同士、ばあさんに二人で線香をあげてやりたい。待っておるからのう」  しげじいさんはどうして母親とLINEをすることになったのか聞いた。裕子さんは親子関係のことで悩んでいることをネットで相談したら、とても親切で優しいアドバイスをくれる人がいて、その人と親しくなったら驚くことに実は母親だとわかり、LINEで交流するようになったと言った。  しげじいさんは裕子さんと会うことをLINEで決めた。ノートをじっくり見ておもむろに声を発した。 「裕子、母さんがおまえに伝えたかったけど、できなかった言葉を伝えるからのう」 「お母さんが……教えてください!」 「どれだけ喧嘩しても私はあなたの味方。困ったことがあったらいつでも頼りなさい。たとえ私がどんな時でも。わかったか?」 「うん……うん……わかった。ありがとう」  裕子さんが大声で泣く声が聞こえた後、ありがとうと言って電話は切れた。しげじいさんは目を閉じると唇を震わせて、手のひらを瞼に強く押し当てながら涙を必死に堪えた。 「八年ぶりに娘に会うのに泣いていられるか。なにもかもリネのおかげじゃな」
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