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学校までの道中、仁村くんは自転車を手で押して、私のノロノロ速度に合わせてくれる。
「仁村くん、遅刻しない? 私、遅いでしょ?」
「ん? じゃあ、乗る? うしろ」
「うしろ?」
仁村くんが指をさすのは、自転車の荷台。
一瞬で思い出すのは、小学生の時に読んだ少女漫画。
高校の制服を着た男子がペダルをこいで、同じ学校の制服の女子が肩につかまりながら、自転車を走らせる光景。
「えっ、まさか、ふたり乗り? そんな、いいよ! 違反だから、おまわりさんに見つかったら、怒られるのは仁村くんだもん」
「おまわりさんて」
手を前に出してブンブンと振ると、仁村くんは吹き出して笑った。
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