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第1話
正月も成人式も過ぎ、
年初の慌ただしさも薄らいできた一月半ばの朝のこと。
ツンと冷えた廊下を早足で進み、猪瀬成海は茶の間の襖を開けた。
「ううー、さぶさぶっ……ねぇ、これ今日雪降るんじゃない?」
持っていたおぼんを置くや否や、彼女はこたつへ滑るように入りこみガタガタ震える。既に定位置についている祖母の菜穂海は、孫の持ってきた朝食を配膳しながらこれ見よがしなため息を投げつけた。
「ふん、情けないね。まだまだこれから寒くなるってのに、先が思いやられるよ」
「湯たんぽ三つ使って寝てるばあちゃんに言われたくないんですけど!」
「まあまあ、二人とも。味噌汁冷めちまいますから、飯にしましょう」
続いてやってきた山田毅一が襖を閉めて、味噌汁と椀に盛られた白米を律儀な手つきでちゃぶ台の上に並べていく。成海も漬物の小皿と箸を並べて、本日の朝食御前が完成した。
毅一が席について成海も居住まいを正し、菜穂海が手を合わせて「いただきます」と礼をすると二人も続く。
祖母と孫、それから祖母の弟子の三人という奇妙な取り合わせで囲む食卓は、しかしこの半年ですっかり日常の一幕となった。そして、
「……毅一、なんだいこの味噌汁は。ダシが随分半端じゃあないか」
と、祖母が渋面で睨みを飛ばしてくるのも定番となりつつある。
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