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孫の口を封じるにはこうするが一番と言わんばかりの颯爽とした箸さばきである。成海も成海で、これ以上奪われないためには食べるしかないと理解しているので、残りをすかさず頬張る。
いつもどおり揺るがぬ美味に目許も緩む……と、同時にこみ上げる反省の情。毅一の手に成るダシ巻き卵は、寿司屋で修業したのかと問いたくなるほど絶妙だ。
均一にムラなくしっとりと焼き上げられた卵は、歯を立ててほんの刹那抵抗を見せると思いきやほどなくふんわり弾け、夢見心地にさせる。そこから舌先に広がる優しい甘さとほんの少しのしょう油の風味、それらをすべて一体とさせる確かなダシのコク――基本の昆布とかつおで丁寧に引いたからこそ得られる、豊饒なる第六の美味。
ああ、分量ってケチったら絶対ダメなんだなぁ……と何も言わずとも分からせられる、匠の逸品である。
涙目でダシ巻き卵を咀嚼する孫を見て菜穂海も溜飲を下げたようで、味噌汁の椀を一口啜ってからふっと微苦笑した。
「まったく、おまえのそういうところは昔とまったく変わらないねぇ、成海」
「そういうとこって、どーゆーとこよ」
「分が悪くなるとあれこれ理屈まくしたててごまかそうとするとこさ」
「そんなことないしっ! ねっ、毅一さん?」
「……いや、ここに来たばかりのときはそんなでもありませんでしたが、最近は……」
「ちょっ、毅一さんまで?!」
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