第1話 

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「…………? えっ、マジでそれ、憶えてないんだけど?」  自分の犯したミスを思い出しては夜中に布団の中で懊悩する性質の成海なので、そんな印象に残るやらかしがあったら忘れるはずはない。  だが、小学生の頃の祖父母宅で過ごした中で巻き起こした数々の失敗談が脳内で渦巻けども(そして恥ずかしさのあまりにのた打ち回りたくなるのをなんとか抑えつつも)、たった今菜穂海が言ったような事例は見当たらなかった。 「えー……なんでだろ? 全然憶えてない……」 「はは、まぁ、ガキの頃のことなんて俺もろくに憶えちゃいないですよ」 「そう、ですよね……?」  毅一のフォローに少しばかり安堵しつつ、どこか爪にできたささくれのような気掛かりを覚え、成海は目を泳がせた。が、その先で点けていたテレビの時刻表示を見つけて慌てる。 「あっ、もうこんな時間?!」  急いで残りの朝食を掻きこみ、お茶で一気に流し込む。自分と菜穂海の皿をおぼんにのせてから手に持ち、そそくさと立ち上がった。 「ごちそうさま毅一さん、おいしかったです。じゃああたし、これ片付けたら出掛けるから!」 「待ちな成海、また無理に職探ししてるってんじゃ、」 「えっと、それは大丈夫! 問題ないから心配しないで、ばあちゃん。じゃ、いってきます!」  成海は居間を出ると階下の台所で手早く洗い物を済ませ、そのまま玄関へ向かい、準備しておいた鞄を肩に掛け、外に出た。
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