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自然と、足が速くなる。
下町風情の残る細道だらけの路地裏を、白く煙る息を弾ませて進んでいく。二つも角を曲がればそこがいったいどこなのか、もう成海にはわからない。
それで構わない――道順は憶えていなくったって、望めば自ずと辿りつく。
すっかり見慣れた薄暗い路地を抜けた奥。
柔らかい陽光の中、
鎮守の森と見紛うような木々を背に静かに佇む日本家屋。
軒先に提げた黒檀の看板に流麗な筆致で《雪魚堂》と屋号を掲げたその店は、今日も確かにそこで成海を待っていた。
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