孤独な蝶は夜の街に身を隠す

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*** 須藤さんにそのうち実家に顔を出すと言ったものの、お店のイベント前ということで挨拶回りや準備で余裕を失っていた私は、なかなか実家に顔を出せずにいた。 そして目まぐるしく時が過ぎていき、あっという間に私のバースデーイベント二日目がやってきた。 梅雨も明けて本格的な夏の到来を予感する季節となった七月初旬、私は緊張と疲れのピークにいた。 実は数日前からあまり体調がよくない。身体が重く、わき腹に違和感と痛みが走るときがある。 それでも休むわけにはいかない。いつものように出勤前に美容室へと向かった。 「桜ちゃんにはこういうふんわりとしたドレスが似合うわ。本当にお姫様みたいね」 「今日も可愛くヘアセットしてくれてありがとうございます」 昨日は着物に合わせて大人っぽく夜会巻きにしたが、今日はふんわりとしたミントグリーンのロングドレスに合わせてハーフアップに仕上げてもらい、それに合う生花を飾り付けてもらった。 「桜ちゃん、顔色が優れないようだけど大丈夫?」 笑顔で普通に接しているつもりだったが、すぐに私の異変に気付くあたりさすが渚さんだ。 「少しだけ体調が優れないですが、大丈夫です」 「とにかく無理はしないでね?」 私は笑顔でコクンとうなずき、美容室を出て店へと向かった。生温かい風が頬を撫でていく。 気持ちを奮い立たせながら歩いていくと、お店の前に飾られたたくさんの花が目に飛び込んできた。 お店のスタッフさんもキャストのみんなも、そして来てくれるお客様も、支えてくれるみんなのことを考えてみれば、具合が悪いとか弱気なことは言っていられない。 とにかく今日も全力で、ラスト一日を駆け抜けようと心に誓った。
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