孤独な蝶は夜の街に身を隠す

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*** 「川口様よりシャンパンを十本いただきました~!ありがとうございます!」 席を移動するたびにお客さんのご好意で、高級シャンパンの蓋が次々に開いていく。 黒服さんたちがその場を盛り上げてくれるなか、私もシャンパングラスに注がれたシャンパンを浴びるように飲んでいく。 お客さんが入れてくれたものを残すというのは失礼に当たるので、次の席に移動する前には必ずグラスを空け、お礼を言って移動するのがマナーなのだ。 「桜さん、次、五番テーブルへお願いします。栗生さんのところです」 グラスのシャンパンを飲みほした頃、黒服さんが私にそう耳打ちしてきて、私はその席のお客様にお礼を言って席を立った。 みんな今日は私のバースデーイベントだと分かっている。そのため、数分しか私が席につかなくても、「おめでとう」と笑顔で言ってくれて次の席へと快く送り出してくれる。 ……だが、彼だけは違った。
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