孤独な蝶は夜の街に身を隠す

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体調不良の私にとっては正直すごくしんどくて、少し気を抜いた私の隙を栗生さんは見逃さなかった。 「桜がやっぱりいちばんだわ」 私の膝に寝転がろうとした栗生さんを見て、すかさずママが止めに入る。 「栗生さん、桜ちゃんのことをお気に入りなのは分かるけれどお触りはダメよ」 ママが優しく諭して栗生さんの手をポンポンと叩く仕草を見せた。 「ママの鉄壁ガードには勝てませんね」 栗生さんが苦笑いを見せた。でもすっかり気分がよくなっていた彼は機嫌が悪くなることもなく、ずっとテンションが高いままだった。 しばらくして次の席へと私が移動しようとき、少し彼はごねたがママがフォローに入ってくれた。 彼をうまくおだててくれたので案外すんなりと諦めてくれて、その日お祝いに駆けつけてくれたすべてのお客様のテーブルをすべて回ることができ、大盛況のうちに私のバースデーイベントは幕を閉じた。
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