孤独な蝶は夜の街に身を隠す

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「桜ちゃん、今日は本当にお疲れさま。体調が悪いのによく最後まで頑張ったわね」 「ママ、気づいていたんですか?」 「何年、一緒にいると思っているの?」 ママが優しく微笑みながら、ミネラルウォーターのペットボトルを差し出してきた。 「ありがとうございます」 「改めてお誕生日おめでとう。桜ちゃんにとって笑顔溢れる素敵な一年になりますように」 店を出ようとすると、ママはサプライズでプレゼントをくれた。こんな風にいつも気遣ってくれるママ。 私にとって弥生ママは第二のお母さん的な存在だ。ママの心遣いに心が温かくなった。それと同時に弥生ママに言われた言葉が頭を過る。 〝笑顔溢れる素敵な一年になりますように〟きっと、私にそんな一年は訪れることはないだろう。 きっとこれからも絶望の中をもがき苦しみながら、色のない世界を生きていのだろうと思いながらママにお礼を言って、店を外に出た。
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