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ネオン街はいまだにキラキラと光輝いていて眠ることを知らない。ここにいると時間の感覚が狂うし、煌びやかでお金が秒で飛び交う世界なので別世界にいるように感じる。
ここには夢がいっぱい詰まっていると同時に、真っ暗な闇が潜んでいる。いつ崩れるかも分からない不安定な場所だ。
ある意味、私のような綱渡りの人生にふさわしい場所なのかもしれない。
階段を下り始めると緊張の糸がプツリと切れ、一気に疲れが押し寄せてきた。
お酒を大量に飲んだせいかガンガンと頭が痛む。きっとこのままタクシーに乗ったら酔って吐いてしまいそうな気がする。
少し夜風に当たることにしようか。
そう思い歩き始めたが、わき腹の痛みがどんどん増していく。そのうちに冷汗が湧き出てきて思わず足を止めた。
「あれ、桜じゃん? こんなところでなにしているの?」
と、前方から男の人の声が届いて反射的にそちらへと意識が流れた。
「……っ」
一瞬、動揺してしまった。
なぜならば、そこにいたのは私が今いちばん顔を合わせたら困る人物だったから。
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