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「ここで会えたのもなにかの縁だし、今から一緒に飲みに行こうよ?」
私とは対照的に彼は嬉しそうだ。いやらしい笑みを浮かべながらこちらへと近づいてきた。
「栗生さん、ごめんなさい。ちょっと体調が思わしくなくて。また今度誘っていた……」
「じゃあ一緒にホテルで休憩しようよ」
「……っ!?」
グイッと腕を引かれた。
すぐに栗生さんの顔が間近に迫り、ニヤリと悪い笑みを浮かべながら私の頬をスッと撫でたことに、全身に悪寒が走り思わず顔を顰める。
「離してください」
「誕生日祝いにたっぷり可愛がってやるからさ」
やはりこの人のことは生理的に受け付けらそうない。
「離してって言ってるでしょ!」
「ムキになったその顔もそそるな」
嫌悪感を露わにして栗生さんの腕を払いのけようとするが、男の人の力に叶うはずがなくて、ずるずると引っ張られてタクシー乗り場の方へと連れていく。
ここは店内ではないので助けてくれる人はいない。このままタクシーまで連れて行かれたらもう最後だろう。必死に抵抗し続けていたそのとき。
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