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彼が意外な条件を口にしたことに、栗生さんも一瞬驚いたような表情を見せたが、すぐにフッと笑いそれに応じた。
そして、彼がその場で画像を消去したのを確認すると、栗生さんは彼を睨みつけながらネオン街へと消えて行った。
「顔色が優れないようですが、大丈夫ですか?」
「大丈夫です。た、助けていただいて本当にありがとうございました」
腹痛が一段と増していき、立っていることができずにしゃがみこんだ私の顔を彼が覗く。
「すごい汗だ。無理をしない方がいい」
私の様子を見てそう感じ取ったらしいが、見ず知らずの彼にこれ以上迷惑はかけたくなくて、首をブンブンと横に振った。
「いや、その……だいじょう……」
だが、あまりの痛みに呼吸をするのもままならなくて、意識が遠のいていく。
……私、どうしちゃったんだろう。
その答えを知る術もないまま、深い闇に堕ちていった。
「……おい。大丈夫か? しっかりし……」
遠のいていく意識の中で私が聞いたのは、必死に私に呼びかける男性の声だった気がする。
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