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***
それからどのくらい時間が流れただろうか。
んっ……。
眼下に感じた陽の光に導かれるように目を開けた。
ここは、どこ?
ゆっくりと辺りを見回す。
白いカーテンのようなものに覆われていて、ベッドに寝ている状態であることが分かった。
そして鼻を掠めるのは消毒液の匂いで、身体に目をやれば病院着のようなものを着ていた。
どういういきさつでここにいるのか分からないが、ここは病院であるようだ。ひとまず身体を起こそうと、腕に力を込めたそのときだった。
トントン──
ノックオンが部屋に響き、私は『はい』と返事をしてそちらを見つめる。
誰かが中に入ってきて、カーテンがサッと開かれた。
そこから顔を出したのは青いスクラブを来たひとりの若い男性で、その顔には見覚えがあった。
「目が覚めたようですね。軽く説明をしておくと、あなたは昨日意識を失って倒れて救急車でここ、三ノ宮病院に運ばれた。体調はどうですか?」
「あなたは昨日の……」
目を見開く私を見つめるのは、昨日栗生さんから救ってくれた男性だった。
私の記憶が間違っていなければ、彼は昨日、自分のことを週刊誌の記者って言っていたはずだ。
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