孤独な蝶は夜の街に身を隠す

24/29
前へ
/108ページ
次へ
*** それからどのくらい時間が流れただろうか。 んっ……。 眼下に感じた陽の光に導かれるように目を開けた。 ここは、どこ? ゆっくりと辺りを見回す。 白いカーテンのようなものに覆われていて、ベッドに寝ている状態であることが分かった。 そして鼻を掠めるのは消毒液の匂いで、身体に目をやれば病院着のようなものを着ていた。 どういういきさつでここにいるのか分からないが、ここは病院であるようだ。ひとまず身体を起こそうと、腕に力を込めたそのときだった。 トントン── ノックオンが部屋に響き、私は『はい』と返事をしてそちらを見つめる。 誰かが中に入ってきて、カーテンがサッと開かれた。 そこから顔を出したのは青いスクラブを来たひとりの若い男性で、その顔には見覚えがあった。 「目が覚めたようですね。軽く説明をしておくと、あなたは昨日意識を失って倒れて救急車でここ、三ノ宮(さんのみや)病院に運ばれた。体調はどうですか?」 「あなたは昨日の……」 目を見開く私を見つめるのは、昨日栗生さんから救ってくれた男性だった。 私の記憶が間違っていなければ、彼は昨日、自分のことを週刊誌の記者って言っていたはずだ。
/108ページ

最初のコメントを投稿しよう!

293人が本棚に入れています
本棚に追加