孤独な蝶は夜の街に身を隠す

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孤独な蝶は夜の街に身を隠す

【孤独な蝶は夜の街に身を隠す】 【葵side】 頬を伝う涙を拭き、気だるげにベッドから身体を起こした。部屋の中は暗闇と静寂に包まれている。 またあの夢を見た。魘されて目が覚めてから心が落ちつくことを知らなくて、心を落ち着かせるためにキッチンへと向かい、お湯を沸かして紅茶を淹れることにした。 そして温かい紅茶をゆっくりと体内へと入れてみる。ぼんやりと部屋の時計を見上げれば、午前三時を少し過ぎたところだ。 ゆっくりと眠ることができずにこうやって目を覚ましてしまうことが多々ある。こんな生活を送るようになってどのくらい経つだろうか。 私の心は、思った以上に悲鳴を上げ壊れていた。思えば、あの家を飛び出してもう六年が経つ。 私の名前は藤堂葵。歳は今年で二十四歳になる。政治家の父と専業主婦の母のもとに生まれた私は、幼稚園から高校までエスカレーター式のお嬢様学校に通い育った。 傍から見れば幸せな家庭見えただろうが、現実は崩壊していた。幼いころから父が母を罵倒する様子を何度も見てきた。
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