淡く儚い永遠の始まり

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個展会場に着くと、私はさっそく中を周り始めた。胸に感じるのは高揚感だ。彼女の作品が好きなのだと改めて思った。 帰りにまた入り口で売っていたポストカードを買って帰ろう。 そう思いながら、この個展のために彼女が新しく描いた、夏の思い出をテーマとしたイラストが展示されているブースに足を進めたそのときだった。 え? ある作品の前でじっと見つめるひとりの人物の姿が目に飛び込んできて、思わず足を止めた。 見覚えのある顔がそこにある。 でも、確信はない。声を掛けるか迷っていると、宙で視線が交わった。 「こんにちは。こんなところで再会するとは、驚きました」 柔らかな笑みを浮かべて私の方に歩を進めてきたのは、私の手術を執刀してくれた七瀬先生だった。
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