淡く儚い永遠の始まり

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「先日はお世話になりました」 ぺこりと頭を下げた。 「その後、体調はいかかですか?」 「おかげさまで元気にやっています」 「ならよかったです」 「はい」 私服姿の先生は、また印象が違う。 シンプルなオーバーサイズの白の半そでシャツに薄めの青のタイトジーンズというシンプルな格好だが、スタイルがいいのでおしゃれに着こなしており、爽やかさがより引き立っているように思える。 肩には一眼レフのカメラをかけていて、作品を写真に収めるつもりなのだろうか。 この佐倉(さくら)さんの個展は写真撮影が許されているので、私もさきほどから何枚か携帯のカメラで撮らせてもらっていた。 「藤堂さん、佐倉先生の作品が好きなんですか?」 「はい。高校生の頃から好きで個展は欠かさずに来ています」 「そうなんですか。実は僕も好きで先生のイラストに日々癒されているのですよ」 まさかの共通点。どこか嬉しく頬が緩んだ。 「よかったら一緒に周りませんか?」 まさかの提案に戸惑ったが、嫌な気はしなかった。私はコクンとうなずいた。 「はい。ご一緒させていただきます」 共通の趣味を持っていると嬉しくて、ついつい熱く語り過ぎてしまうものなのだと、七瀬先生と一緒に館内を巡りながら思った。 私ってこんなに饒舌だったの? 自分でもそう思うくらいにベラベラと話してしまったではないか。 それでも先生は嫌な顔ひとつせずに、相づちを打ちながら聞いてくれた。 本当に優しい人だ。
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