293人が本棚に入れています
本棚に追加
「先日はお世話になりました」
ぺこりと頭を下げた。
「その後、体調はいかかですか?」
「おかげさまで元気にやっています」
「ならよかったです」
「はい」
私服姿の先生は、また印象が違う。
シンプルなオーバーサイズの白の半そでシャツに薄めの青のタイトジーンズというシンプルな格好だが、スタイルがいいのでおしゃれに着こなしており、爽やかさがより引き立っているように思える。
肩には一眼レフのカメラをかけていて、作品を写真に収めるつもりなのだろうか。
この佐倉さんの個展は写真撮影が許されているので、私もさきほどから何枚か携帯のカメラで撮らせてもらっていた。
「藤堂さん、佐倉先生の作品が好きなんですか?」
「はい。高校生の頃から好きで個展は欠かさずに来ています」
「そうなんですか。実は僕も好きで先生のイラストに日々癒されているのですよ」
まさかの共通点。どこか嬉しく頬が緩んだ。
「よかったら一緒に周りませんか?」
まさかの提案に戸惑ったが、嫌な気はしなかった。私はコクンとうなずいた。
「はい。ご一緒させていただきます」
共通の趣味を持っていると嬉しくて、ついつい熱く語り過ぎてしまうものなのだと、七瀬先生と一緒に館内を巡りながら思った。
私ってこんなに饒舌だったの? 自分でもそう思うくらいにベラベラと話してしまったではないか。
それでも先生は嫌な顔ひとつせずに、相づちを打ちながら聞いてくれた。
本当に優しい人だ。
最初のコメントを投稿しよう!