エリート外科医の甘い独占欲～どんでん返しは復讐のあとで～

淡く儚い永遠の始まり

「久しぶりだな」

その日、仕事が終わり店を出ると、一台の黒の高級車からひとりの人物が降りてきた。一気に心音が速まり、負の感情が広がっていくのを感じていた。

「そんなにあからさまに嫌な顔をしなくてもいいだろう？」

不快な笑みを浮かべながら私を見るのは、私がこの世界で一番嫌いな、父親だ。

「なにしにきたのですか？」

自然とぶっきらぼうな態度を取ってしまう。

この人と顔を合せるのはいつぶりだろう。昔過ぎて思い出せない。

「娘のことを気に掛けるのは親として当然だろう？」

「……」

そんな気持ちこの人には決してない。自分がいちばんで己の利益のためでしか動かないこの人が今さら私のことを気に掛けるなんて、あるわけがない。

いったいなにをしに現れたのだろうか。妙な胸騒ぎを覚えた。

「私、疲れているので失礼します」

不安と恐怖から一刻も早く逃れたくて、私はその場を離れようと歩を進めた。

「話はまだ終わってはいない」

と、次の瞬間、グイッと腕を引かれて足が止まる。