一 消しゴムと消えた親友

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「筆野さん、受付に来客よ」 「まさか紙山が来たのか?」 墨田係長が顔をしかめると菊池さんは申し訳なさそうに頷いた。 「あいつがオフィスに入って来るといろいろ面倒なんだよ。筆野さん、もうチェック済んだ?」 「あっ、はい!たった今、終わりました」 「じゃ、ちょっと来て」 部内に戻ると総務部専用の持ち運び式の小型金庫を渡された。 「これで代金支払ってさっさと帰ってもらって」 「さっさと?」 「いいからさっさと!」 「はっ、はい。さっさと行って来まーす!」 押し出されるように部内から廊下に出ると追いかけて来た菊池さんに声をかけられた。手には紙山文具店で借りた黄色い籠を持っている。 「これ、忘れ物」 さっき慌てて出てきて備品室に忘れてしまったのだ。頼れる先輩にありがとうございますとお礼を言うと、「気をつけてね」となぜか心配そうな顔で見送られた。
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