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「目的を教えろ? それは一つ目の願いってことでよいですか? それではお答えします。目的なんて御座いません。人間様の生活のお手伝いをして住み良い社会を作ろうと励んでいるだけです」
魔人は緑色の真顔で言う。
「はあ? 十年前に武漢の研究所からウイルス盗み出してバラ巻いたのもオマエの仕業だろうが!」
「だってあれは環境活動家の利用者様が『せめて世界人口が半分に減れば地球温暖化も防げるのに』と願われたからでして......パンデミックだけじゃ一向に減らなかったので第三次世界大戦のオプションサービスをお付けしました。利用者様が真っ先に感染でお亡くなりになったのは残念ですが......」
「独裁者達が一斉に狂ったのもオマエの仕業かよ! 呆れてものが言えねえぜ!」
青年はガジェット屋の棚を殴る。サイボーグ店主は困惑している。
「憤りはごもっともですが、そんなお怒りでは冷静な判断を損ねてしまいます。ちょっと外でも散歩しませんか? どうですかアラジンJr. さん」
そう呼ばれた青年は渋沢福沢聖徳の混ざった不揃いの札束をレジカウンターに置き、魔人の幻影放つデバイスを掴んだ。
「このガラクタ貰ってくぜ。釣りは要らねえ。迷惑料だ」
彼はガスマスクとゴーグルを着けて顔を隠し、店舗の防護ドアを開けて外に出た。
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