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「俺の最後の願いは、過去現在未来を含めた地球人類史において『戦争』という概念は存在しないという新体制だ」
ジュニアは意を決して言葉を叩きつける。
「え? そもそも人間は戦争する為に進化した生物ですよ。この先の戦争を無くすだけでなく起こった歴史も消せってことですか? そりゃあ幾らなんでも承認出来かねます。雇い主様のゲームのスコア記録や今後の楽しみを奪う事になるんで......でも念の為にダメモトでお伺いを立ててみます」
困り顔を更に濃い緑にしたランプ魔人は、声を出さず天空と通信していた。
アラジンの末裔の青年は自分の願いが荒唐無稽である事を理解していた。それは噴気を撒き散らす為に真っ先に前線に飛び出すような好戦的な自分の短慮な性格への自己嫌悪としてのアンチテーゼな立案だった。
「お待たせしました。お待たせし過ぎたかもしれません。雇い主様からの快い承諾を得ましたので、これから実行させて頂きます。ここまで規格外な歴史改変はやった事がない大事業なんで些か不安ではありますが、引き継ぎ少々お待ちを〜〜」
魔人は巨大化して積乱雲のように空の全てを覆い幾筋もの稲妻を落とし、やがて弾け、ばら撒いたミントのタブレット菓子のように時空の中へ転がり消えて行った。
「あ、逃げた!」
妖鳥だった少女は空へ追いかけようとするが、もう翼が無いので諦めた。
ジュニアはそれが逃亡ではないと知っているから待った。アラジン家が設立した組織は長年の追跡調査で魔人の特性を熟知している。奴はどんな無理難題もやってのける。悔しいけれど。
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