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「それさ、別に生まれ変わらなくても出来るやつじゃん」
陽菜はもぞもぞとベッドの上で仰向けから横向きに体制を変え、体ごと瑞希に向ける。
瑞希は動いた陽菜をちらっと見ると、悲しそうに笑うだけで何も言わなかった。
「海は?」
「え?」
「どうせ海にも同じ事聞いたんでしょ。もしも生まれ変わったら何になりたい?って」
陽菜は話題を変えた。さっきの一言はまずかった。恐らく瑞希にとって一番言われたくなかった言葉だろう。
考えなしで発言した自分を殴ってやりたい気持ちに駆られる。瑞希にそんな顔をさせるつもりでは無かった。
「あぁー、陽菜」
「ん?」
「陽菜になりたいんだって、海」
陽菜の心配をよそに瑞希は明るい声でそう言うと、体勢を変えて陽菜の方へ体を向けた。2人はベッドの上で向かい合って寝転がる形になる。
瑞希にお互いの息が掛かるような距離でじっと見つめられると、陽菜の心臓の音が大きくなった。
陽菜はなんだか恥ずかしくて瑞希に吐息が掛からないように、自分の口元をそっと手の甲で隠してから口を開く。
「嘘だ」
「おい、俺は陽菜に嘘なんか付いたこと無いだろ」
「……そうだけど」
海は陽菜の双子の妹だ。
双子といっても二卵性だから見た目が瓜二つというわけではない。おまけに性格もまるで違う。引っ込み思案で意地っ張りな陽菜と違って、海は社交的で天真爛漫を絵に描いたような子だった。
甘え上手な海は昔から可愛がられてきたし、少し抜けたところさえも周りから愛されるポイントで、海がいると皆が明るくなった。
そんな海は陽菜にとって自慢の妹である。
海が私になりたい?何かの間違いではないのか。海と違って自分には憧れられる要素など一つも無いというのに。
「じゃあどうして私って?」
陽菜は到底理解が出来なかった。
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