蕾のハナミズキ

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 瑞希の瞳に映る私は、自然に笑えているのだろうか。 「うん、ありがとう。今から出しに行くんだから、それフライングだけどね」  瑞希の笑顔は自然でとても綺麗だった。  パタンと部屋の扉が閉じて、世界は陽菜1人だけになる。  一呼吸置いて瑞希が一階へ降りた頃、母の声が聞こえてきた。「瑞希くん! 来てたのね、海ももう支度が出来るから」という母の声はいつもよりどこかテンションが高い。  陽菜は続きを聞きたくなくて羽毛布団を引っ掴むと、もう一度布団の中へ潜り込んだ。  もしも昨日、海の「陽菜ちゃんは、もういいの?」という言葉に「よくない」なんて答えていたら今日は来なかったのだろうか?  いや。もしも瑞希が夢を諦めていなかったら?  もしもーー。  もしも、私が先に瑞希に告白していたら?  今日、海と瑞希は婚姻届を出しに行く。  今日から私は、瑞希の姉になるのだ。 「もしも生まれ変わったら海になりたい」  もう誰も聞いちゃいないのに1人そう呟けば、堪えていた寂しさが胸の中いっぱいに広がった。 完
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