天使が狩られるこの街で

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「違う!」  その時、一筋の雲を割いて一体の天使が舞い降りた。女神のような姿にアラシは目を剥いた。 「アイツの翼…!燃えてやがる…!」  その翼こそ、すべてに勝る武器。燃え立つ翼をひと羽ばたきさせるごとに、鐘の音が誰の心にも響き渡った。それほどまでに美しい駆動音だった。レイヤの懸命な調律の賜物だ。 「聞こえんだろ?この駆動音が。天使の心の声さ」 「心だぁ!?機械に心なんてあるわけねぇだろうが!」 「なら、アラシ!オマエは天使に何を求める!?」 「力!それ以外に求めるものなんてねぇ!強さだけに価値があんだよ!」  鷹型天使の群れは、燃え立つ翼の天使に戦いを挑んだ。矢のごとく急降下し、一丸となって降り注いだ。けれど、それらの挙動がレイヤの目にはどうしてもぎこちなく映った。 「動きが鈍い!調律を怠ったな!悪いが、大天使の敵じゃないぜ!」  大天使型は、翼を大きくひと羽ばたきさせた。すると、炎の風を巻き起こしてみせた。そうして鷹型天使の群れを一網打尽にした。  アラシは愕然とした。五十羽にも及ぶ大群がたちどころに倒されたのだから無理もない。ただ、まもなく彼は喜びに打ち震えた。
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