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最強は薔薇のように
サイハは、少女ながらも調律師。研究に没頭する多忙な日々を送っている。大抵は部屋にこもりきりだが、時折外に出て気分転換を図ろうとする。今日がまさにそうだった。正午になって作業に一区切りついたので、気晴らしに外出しよう。ところがその矢先、来客があった。
サイハは、訪れたレイヤを一目見て目を丸くした。
「あ。来た」
「久しぶりだな、サイハ!話はもう聞いてるだろ?」
「今はそれどころじゃないよ!ほら、ワタシは忙しいんだから、どいてどいて!」
「お、どこ行くんだよ?」
サイハは街に用事があった。大通りを徘徊し、路地裏をしきりに覗き込み、公園では草藪を枝で突っついた。そうやって街中を闇雲にうろつき回って何かを探してばかりいる。とても忙しそうには見えない。いよいよレイヤは首を傾げた。
「なぁ。さっきから何してるんだ?」
「そんなの決まってるじゃん。天使を探してるんだよ」
「こんな街中にいるわけないだろ。あ、でもオレも猫型一匹見つけてたか」
「ネコちゃん?どうせならクマさんの方がいいよ」
「はぁ!?街にクマなんているかよ!」
「あいかわらず世間知らずだなぁ、レイヤは。ほら」
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