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そばにあった街路樹の幹には、爪で引っ掻いたような痕が残されていた。相当に大きな爪痕だ。それこそ熊型天使の仕業。レイヤは戦々恐々とした。
「まさか…本当に…!?」
「まだ新しい傷だね。まだ近くにいるかな~?」
追跡するための手がかりをサイハは決して見逃さない。爪痕はもちろん、砂利道にだって足跡が残っていた。しかし、なにより大事なのは、音だ。天使からは独特の美しい駆動音がする。だから、耳をすませばその音を頼りに天使の足取りを追える。たとえどんなに小さかろうが、調律師ならば聞き逃すことはない。
自然公園に差し掛かった頃、サイハは、やや歪な駆動音をはっきりと耳にした。
「ここだね。クマさんの音がこの公園から聞こえてくるよ」
「あいかわらず耳いいなぁ、オマエ!」
その聴覚にレイヤは脱帽させられた。負けじと耳を澄ましてみたが、レイヤの耳ではそれらしき音を掴めない。目当ての天使とは、まだ距離があるのだ。
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