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「もちろんさ。ま、僕のコレクションの中では一番安っぽい天使かな」
「安っぽい!?天使が安いわけないだろ!」
「豹型天使がかい?こんなもの、二十八体も持っているよ。なんなら君に一体くれてやろうか?」
こんな嫌味なヤツでも調律師なのか、とレイヤは思った。ただ、それよりも熊型天使の様子が気に掛かる。ぐったりして微動だにしない。駆動音の異常を聞き取っていたからなおさら心配だ。ほうってはおけない。すぐに調律して治してやろう。
レイヤは、調律に必要な道具を持ち合わせていた。すべてハッカから借り受けたものだ。熊型天使は幸運だ。この場で美しい駆動音を取り戻せるのだから。ところが、レイヤの出る幕はなかった。サイハに先を越されたのだ。
「よしよ~し、クマちゃん!ワタシが綺麗にしてあげるからね!」
サイハは熊型天使の傍ら、既に調律の準備を済ませていた。レイヤは、うんと頷いた。やはり調律師はこうでなくては。
けれど、いまだ豹型天使が牙を鳴らしている。標的であるレイヤに向かって。その所有者である少年の目的はただひとつ。
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