最強は薔薇のように

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「テメェがオレの獲物を横取りしようとしやがるからだ!大天使はオレの獲物だ!テメェには絶対渡さねぇ!」 「身なり、言動、立ち振る舞い。そのすべてが醜いんだよ、君は。大天使にふさわしいのは、相応の気品と才能を持つ、このコネクタだけだ!」  調律師同士が争うなど、これまでのレイヤの常識からすれば考えられないことだ。この街の調律師は、本来の役目を忘れ、日々戦いに明け暮れている。天使を獲物、あるいは戦いのための道具としか見做(みな)していない。どうりで身内が危機感を抱くわけだ。レイヤは、この時になってようやく思い知った。この街の有様を。 「やめろ!!なんで戦うんだ!?」  もはや誰も答えてくれない。誰も耳を貸してくれない。ひとりごとだ。そう思ったが、サイハだけは違った。熊型天使を調律しながらも口を利いた。 「レイヤ。もう戦うしかないよ」 「でも…!!」 「ほらほら、耳をすましなよ」  天使が泣いている。豹型も鷹型も泣いてるんだ。互いに傷つけ合い、たちまち駆動音が汚れていく。 「止めなきゃ…!オレが…オレが止めなきゃ!!」
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