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天使が狩られるこの街で
レイヤは野良猫を庇っていた。
「おい、猫を無理矢理捕まえるなよ!嫌がってるだろ?」
街の片隅にてひっそりと暮らす野良猫にも自由がある。心ない輩に対してそう激怒した。
「いやぁ…。そう言われても、その猫……機械にしか…」
確かにその猫は機械だった。そればかりか、真っ白い翼まで生えていた。猫に似せて作った精巧な機械に違いない。もはや生き物ですらないが、それでもレイヤはその猫を守るのだ。
「機械は機械だけどさ。ほら、耳をすませば聞こえるだろ?心の声」
「いや、全然。ちょっと君、名前は?持ち物だけ見せてもらっていい?」
警官ならば職務質問くらいする。レイヤに悪気はないのだが、どうにも不審に思われてしまった。
レイヤは十四歳とまだ若い。彼が、ここ“階都”へ遠路遥々やって来たのはつい先刻、今朝のことだ。少年ではあるが、長旅をしてきたのだ。ただ、手荷物は何ひとつ持ち合わせていない。手ぶらのままだ。ところが、警官を驚かせるほどの素性を隠し持っていた。
「調律師!?君、調律師なの!?」
「一応だけど。ところでさ、サイハって女の子を探してるんだ。知らないか?」
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