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その牙に天使の涙
この街に来てからというものの、レイヤはマリアという少女の世話になっていた。彼女の屋敷で寝泊まりし、調律の際に必要な部品などもわざわざ揃えてもらっている。レイヤが街で活動するにあたっての拠点というわけだ。
マリアもまた、調律師。レイヤより二つ年上だったから姉のように振る舞うのが常だ。
「レイヤくん。お客さまが見えてるわ」
「お、誰?」
「うふふ、ハッカちゃん。かわいい女の子よ。レイヤくん、隅に置けないわねぇ」
「すみ?まぁいいや!」
ハッカと会うのは久しぶりな気がする。わざわざ自分を訪ねてきてくれるなんて、レイヤはなんだか嬉しくなった。ハッカは玄関口に立っていた。その腕に猫型天使を抱いている。自分が治したものだとレイヤは一目見て分かった。
「お、大事にしてくれてるんだな!」
「あはは…。まぁ、本当はダメなんですけどね…。調律師じゃない人が天使もったら」
「小さいことは気にすんな!それで今日はどうしたんだ?」
「えっと…。レイヤさんに見てほしいものがあって…」
「オレに?」
立ち話もなんだからとハッカに上がってもらった。居間に招いてそこで落ち着いて話を聞こう。ところが、思わぬ邪魔が入った。招かねざる訪問者の気配をマリアは咄嗟に察知した。
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