その牙に天使の涙

4/9
前へ
/147ページ
次へ
「そうかい?じゃあ、僕が一からコーチしてあげよう。なに、僕は一流の教師でもある。既にひとり、優秀な生徒がいるんだ」 「け、結構です…」  そうやって誰それ構わず口説こうとするのだ。周囲から白い目で見られようがなんのその。本人なりに紳士を貫いている。それほどまでに異性に熱心なのだ。その情熱を天使にも向けてくれればいいのに、とレイヤは思った。  コネクタはハッカに夢中だ。どうにか親しくなろうと一方的に会話を重ね、そのせいで時が経つのを忘れてしまった。ある時、はっとして使命を思い出した。 「…おっと、いけない!これから大事な仕事があるんだった。では、ハッカちゃん。僕はこれで」 「そうですね。あ、ちなみに仕事ってなんですか?」 「秘密、かな。君を危険に巻き込むわけにはいかないからね。ごめんよ!」  そう告げてコネクタは玄関口から飛び出していった。ようやく面倒が消えてくれた。ハッカは心なし嬉しそうだ。マリアは彼女に同情した。二人して同じ心境だったのだ。  レイヤは、初対面からコネクタをいけ好かなく思っていた。けれど、彼の仕事には興味があった。
/147ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加