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「ああ、Dr.サイハでしょ?悪いけどねぇ、君みたいな得体の知れない子とは会わないよ。ただでさえ忙しいみたいだし」
「そこをなんとか!お願い!」
「駄目駄目!とにかく、その猫みたいなのは君に任せるから!煮るなり焼くなり好きにしてくれ!」
街に来て早々に職務質問を受けるとは思わなかった。レイヤは、人知れずため息をもらした。この街に来てからというものの、道が分からず迷ってばかりいる。これからどうしたものかと悩んだ矢先、ひとりの少女が恐る恐るだが声を掛けてきた。
「あの…。さっきの話…」
「お?」
「あっ、すみません!盗み聞きするつもりはなかったんです!その…たまたまで…」
「もしかしてオマエもこの猫を捕まえにきたのか?」
「いえ、そうじゃなくて…。さっき調律師だって…」
「あ、そうか!この猫、オマエのか!それでオレに治してほしいんだろ!?」
その猫に耳を澄ますと、体内から清らかな鈴の音が聞こえる。川のせせらぎにも似ている。ただ、少しくぐもったような感じがする。
「…音色が汚れてる。ちょっと調子わるいみたいだな。でも、大丈夫。すぐ元気になるから」
「それ…機械ですよね?」
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