天使が狩られるこの街で

2/10
前へ
/147ページ
次へ
「ああ、Dr.(ドクター)サイハでしょ?悪いけどねぇ、君みたいな得体の知れない子とは会わないよ。ただでさえ忙しいみたいだし」 「そこをなんとか!お願い!」 「駄目駄目!とにかく、その猫みたいなのは君に任せるから!煮るなり焼くなり好きにしてくれ!」  街に来て早々に職務質問を受けるとは思わなかった。レイヤは、人知れずため息をもらした。この街に来てからというものの、道が分からず迷ってばかりいる。これからどうしたものかと悩んだ矢先、ひとりの少女が恐る恐るだが声を掛けてきた。 「あの…。さっきの話…」 「お?」 「あっ、すみません!盗み聞きするつもりはなかったんです!その…たまたまで…」 「もしかしてオマエもこの猫を捕まえにきたのか?」 「いえ、そうじゃなくて…。さっき調律師だって…」 「あ、そうか!この猫、オマエのか!それでオレに治してほしいんだろ!?」  その猫に耳を澄ますと、体内から清らかな鈴の音が聞こえる。川のせせらぎにも似ている。ただ、少しくぐもったような感じがする。 「…音色が汚れてる。ちょっと調子わるいみたいだな。でも、大丈夫。すぐ元気になるから」 「それ…機械ですよね?」
/147ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加