天使が狩られるこの街で

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「ああ。“天使”さ」  あらゆる生物をかたどって作られた機巧。それこそが“天使”と呼ばれる、人類史に残る発明だ。その名に違わず純白の翼を背に生やしており、生物と遜色ないほどに滑らかな動きをする。ただ、機械であるため時として故障に見舞われることがある。  今しがたレイヤが診断したその猫は、正式には“猫型天使”と呼ばれる機巧だ。しかし、やや調子が悪そうだ。その根拠は、天使特有の美しい駆動音にある。普段なら清らかな鈴の音が、少々くぐもって聞こえる。 「やっぱメンテナンスは定期的しないとな。天使は精密機械だからさ。ほっとくとそのうち壊れちゃうぜ」 「本当に調律師なんですね…!じゃあ、治したりもできるんですか!?」 「あいにく道具を持ってきてないんだ。貸してくれるか?」 「はい!私、ハッカって言います!」  ハッカは猫型天使の持ち主ではない。それでも常日頃から気に掛けてはいた。いくら機械といえども路地に横たわってばかりいると、壊れているのではないかと不安になる。
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