天使が狩られるこの街で

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 調律師とは、天使の専門家。天使の不調を治そうと思えば彼らを頼る他ない。ハッカの自宅には修理に必要な道具が揃っているそうだ。それさえあれば、レイヤが瞬く間に猫型天使を治してしまうだろう。  ところが、ハッカの自宅へと向かう道中、レイヤの頭上高くを旋回する不審な影があった。鷹を模した機巧、鷹型天使だ。その背から天使の翼を生やしていたから、四枚もの翼があった。ある時、鷹型天使は勢いよく急降下して、レイヤの腕の中から猫型天使を奪い去った。 「あっ!おい、泥棒!」  その鷹型天使は、ひとりの少年によって所有されている。猫型天使を奪い去ると、主が待ちわびるビルの屋上へと引き返した。けれど、少年は不満そうだ。 「なんだ猫型か…。てんでたいしたことねぇ」  少年は猫型天使を手に入れはしたが、たかが猫ごときとすぐに放り捨ててしまった。機械とはいえ猫をぞんざいに扱うとは許せない。レイヤは怒りに満ち満ちた。 「おい!いきなり人から奪っといて、どういうつもりだ!?」 「なんだテメェは?」 「オレ、レイヤ!今朝この街に来たばかりなんだ!」 「それがどうした?馴れ馴れしいヤロウだな」
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