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  このお部屋には立派なベッドがございます。私は生まれてからずっと畳間で布団を敷いて寝ておりましたもので、最初はそのふわふわとした感触が少々落ち着かないと言いますか、心もとないような気持ちでございましたが、横になりますと、まるで雲の上で休んでいるような、これは私の想像の中のお話でございますけれど、そんな心地よさがございました。  また、このベッドの前にはとても大きな、天井まで届くかのような鏡がございました。私の全身をそのまま映してしまっても、まだ余るほどの大きさの鏡です。借家住まいではこのような大きなものは置けませんから、私はいつも母の小さな鏡台でもって、髪の乱れだけを整えるばかりでしたので、この大きな鏡で自分の姿を映す事が、何だか自分の全てを見透かされているようで、たいそう恥ずかしい事のように思われてなりませんでした。
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