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声と蛍1
太一が突然いなくなってからの事はあまり覚えてない。飛び出してきてしまった会社やおじさんおばさん、うちの両親に友達への連絡。それからお葬式まで。全てがあっという間だった。うちの両親やおじさんおばさんに手伝って貰いながら色々としたはずなんだけど、まるで抜け殻が勝手にやったみたいに全然覚えてない。
それからは少しの間、会社がくれた休みを一人家で過ごしていたけど毎日のように哭いてた。毎日じゃなかったけど、両親やお姉ちゃん、おじさんおばさんに友達のみんなが家に来ては私を慰め元気付けようとしてくれたから何とかなった。でももしずっと独りだったらと思うと少し怖い。それほどまでに私は底にいた。暗くて息苦しい、冷たくて怖い――悲しみの底。いや、底なんてない。ずっと落ち続けるだけ。底なし沼のように深く、深海のように暗く冷たい悲しみを。ただ落ち続ける。
まるで世界から太陽が消えてしまったような気分だった。私は希望のない世界がこんなにも暗い事を初めて知った。双眸から流れ落ちる泪は涸れても心の流す泪は涸れないという事を初めて知った。本当の意味での独りぼっちの夜がこんなにも淋しい事を初めて知った。
私は自分にとって太一がどれだけ大きな存在かを改めて知った。私は太一と話をして抱き締め合ってキスをする事がどれだけ幸せかを改めて知った。私は太一をどれだけ愛してたかを改めて知った。
「もう一度、会いたい……」
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