探し物

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アパートから出ると眩しい日差しにめまいがした。 一週間ぶりの日の光は容赦なく僕に降りそそぐ。 部屋に引き返したい気持ちをどうにか抑えて少し歩くと、だいぶましになった。 行く場所は出る前に決めた。 図書館へ行って、紗苗さんの一番好きだった本を読もうと思った。 ただ、タイトルが思い出せない。作者も分からない。 こんな状況で本当に見つかるのか分からないけど、それでもいいと思った。 見つかるまで探そうと思った。 何日でも何週間でも。見つからなかったら僕はずっと紗苗さんのことを考えていられるから。 歩いていて気になった。 やけに若い人が、というか学生が多い。 制服だったり私服だったりするが、確実に学生だろうっていう子が多い。 今日は水曜日のはずだ。 皆学校はどうしたんだろうか。 ……ああ、そうだ、今日は11月23日。祝日だ。 仕事を辞めて今日が何日なのかも分からなくなっていた。 「重症だな」と誰にともなく呟いて、そこまできつくないはずの日差しの中を、耐えながら歩いた。
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