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図書館は思っていたよりも人が少なかった。
お昼時というのもあるのかもしれない。
適当な本棚の前に立って、どうしようかと考える。
タイトルと作者以外から本を探す方法なんてあるのか。
そもそも僕は普段本を読まない。
紗苗さんに勧められた本ですら読まなかったくらいに。
だから、有名な作者の本を見てみようかと思っても、誰が有名なのかすら知らない。
そして、紗苗さんが好きな作者が誰なのかも、どんな話が好きなのかも、もちろん覚えていないし、分からない。
今朝の夢の続き。紗苗さんは、あの後なんて言ったのだろう。
もう少し夢を見ていたらヒントがあったかもしれない。
僕の記憶の深くに埋まっているものが掘り返されていたかもしれない。そう思うと、隣の部屋の男の子を理不尽に恨んでしまいそうになる。
見つからなくてもいいとは思っていたけど、ここまで手掛かりがなかったらそれ以前の話だ。
目の前の本棚に並んでいる本を一つ一つ見ていく。
とりあえず小説の棚は一通り見終わったが、それっぽいものは見つからない。
というか、どれがそれっぽいのかも分からない。
結果、僕はただ背表紙を片っ端から眺めただけだった。
ああ、何か手掛かりはないのか。……ああ、そうだ、あの本の表紙は黒っぽくて、
「あの、」
途端、後ろから声がかけられた。
振り向くと、女の子が立っていた。黒くて少しふわふわした胸くらいまでの髪を結ぶことなくたらしている。
高校生くらいだろうか。
そこで、ずっとこの本棚の前に突っ立っていることに気が付いた。
「ああ、ごめんね、邪魔だったかな」
全く見つかりそうな感じはないが、もう少しで表紙が思い出せそうだ。
とりあえず外に出ようと入口の方へ向かうと、女の子は言った。
「あ、いえ、そうではなくて」
そうじゃない?
じゃあ何だろう。女子高生に話しかけられるような楽しい人生は送っていないはずだ。
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